医師とのコミュニケーション:終末期医療の説明を理解し、質問するポイント
終末期医療における医師とのコミュニケーションの重要性
ご家族が終末期を迎えられた際、医療チーム、特に主治医とのコミュニケーションは、今後の医療方針やケアを選択する上で極めて重要となります。医師は専門的な知識に基づいて病状や予後、そして治療の選択肢について説明を行いますが、聞き慣れない専門用語や、感情的な動揺から、その内容を十分に理解することが難しい場合も少なくありません。
しかし、正確な情報を得て、疑問点を解消することは、患者さんご本人の意思やご家族の希望に沿った、後悔のない意思決定を行うために不可欠です。医師との円滑な対話は、最善のケアへと繋がる第一歩と言えます。
医師からの説明を理解するためのポイント
医師から病状や治療について説明を受ける際は、限られた時間の中で多くの情報を整理し、理解する必要があります。以下の点を意識することで、より効果的に情報を得ることができます。
- 事前に情報を整理しておく
- 患者さんのこれまでの病歴、アレルギー、服用中の薬などをまとめておくと、医師がより的確な情報を提供しやすくなります。
- 患者さんご本人の医療やケアに関する価値観、どのような状態を望むか、あるいは望まないかなどを、もし可能であれば事前に確認しておきましょう。
- メモを取るか、録音を検討する
- 説明内容を忘れないよう、メモを取りながら聞くことをお勧めします。重要な単語や聞き取れなかった箇所などを記録しておくと、後で見返したり、他の家族と共有したりする際に役立ちます。
- 医療機関によっては、録音を許可している場合もあります。事前に医療チームに確認し、許可が得られれば録音することも有効な手段です。ただし、無断での録音は避けましょう。
- 分からない用語は遠慮なく質問する
- 医師は専門用語を使うことがありますが、理解できない場合はその場ですぐに「○○とはどういう意味ですか」「もう少し分かりやすく説明していただけますか」と尋ねましょう。あいまいなまま進めると、誤解が生じる原因となります。
- 説明の場で冷静さを保つ工夫
- 親しい家族の病状について説明を受ける際は、感情的になることもあるでしょう。可能であれば、落ち着いて話を聞けるように、信頼できる他の家族に同席してもらうなど、サポートを得ることを検討してください。
家族の意向や希望を伝えるポイント
医師からの説明を聞くだけでなく、患者さんご本人やご家族の希望、価値観を正確に伝えることも重要です。
- 家族間で事前に話し合う
- 医師との話し合いに臨む前に、ご家族の間で患者さんのこと、今後の医療やケアについて時間をかけて話し合い、どのような点を重視したいか、どのような選択肢を希望するか(または希望しないか)について、できる限り意見をまとめておきましょう。
- リビングウィル(事前指示書)やアドバンス・ケア・プランニング(ACP)で話し合った内容があれば、そのことを医師に伝え、内容を共有することが大切です。
- 伝えたいことを整理しておく
- 話し合いたいことや、医師に伝えたい希望、質問したいことなどを事前にリストアップしておくと、伝え漏れを防ぐことができます。
- 感情的にならず、落ち着いて話す
- 難しい状況ではありますが、落ち着いて、敬意を持った態度で話すことが、医師との良好な関係を築き、円滑なコミュニケーションに繋がります。
- 「わからない」「迷っている」気持ちも伝える
- 全ての疑問を解消できず、選択に迷うこともあるでしょう。そのような場合、「まだ十分に理解できておらず、判断に迷っています」と正直に伝えることも重要です。医師は、ご家族が理解し、納得して意思決定できるようサポートする役割も担っています。
終末期医療に関する質問リスト例
医師との話し合いに備え、以下のような質問を事前に準備しておくと役立ちます。
- 現在の病状はどのような状態ですか。今後、どのように進行することが予想されますか。
- 痛みやその他の苦痛は、どのような方法で和らげることができますか。
- 考えられる医療的な選択肢にはどのようなものがありますか。それぞれの選択肢について、期待される効果、副作用、合併症、そして今後の予後への影響について説明していただけますか。
- 医療的な措置を行わない場合、病状はどのように経過しますか。
- 延命治療を選択した場合、どのような生活を送ることになりますか。延命治療を選択しない場合、どのようなケアが提供されますか。
- 治療やケアにかかる費用について、概算を教えていただけますか。利用できる公的な支援などはありますか。
- 患者本人が大切にしていることや、どのような状態を望んでいるかについて、どのように考慮してもらえますか。
- 誰に、いつ、相談することができますか。
まとめ
終末期医療における医師とのコミュニケーションは、患者さんご本人の尊厳を守り、ご家族が納得のいく選択をするために欠かせません。医師の説明を正確に理解し、ご家族の意向を適切に伝えるためには、事前の準備と、疑問点を積極的に質問する姿勢が重要です。本記事が、医療チームとの対話を通じて、ご家族にとって最善のケアへと繋がる一助となれば幸いです。